愛はすべてを癒す

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序文

愛との遭遇」で昨日書いた女性に、この意識を忘れないうちにメモしてほしいとお願いしていた。ふたたび錯覚の方の現実に騙されそうになったとき、実体験したことを思い出せるように、なるだけ詳細に書いて保持していてほしかったのである。すると、書いたメモを私に送ってくれたから、彼女の許可をもらい、一部に注釈を入れ、また私の箇所を「Aさん」に変えて、あとはそのまま掲載することにする。したがって以下はタイトルも含めて彼女の文章である。

向かうところ敵なしの愛

仕事終わりの、いつもの帰り道・・・
私は歩きながら仕事の不平不満をもう一人の彼女と途切れることなく話していた。
静寂も安らぎもなく、ずっと彼女は私に怒りを語る。私は否定することも無視することもなく
彼女の意見に耳を傾け同調することしかできない。
今にも水が入ってきそうなぼろぼろの船の舵を握っているのは彼女だった。

暗い夜の海を揺れ動く中、みぞおちが苦しくて、Aさんに言われた通り眉間に意識を集中させようとしても上がってきてくれない。彼女の行先すら私は知らないし、彼女が話す仕事の恐怖、不満、恨みは増すようだった。

船から飛び降りて逃げようとしても彼女が救い上げて話を続けてくるが濡れて冷え切った体を拭いてはくれない。
どうすれば陸についておしゃべりで自己中心的な彼女から逃げることができるかばかり考えていた。

あっという間に自宅のスーパーにたどりついた(注:マンション内のスーパーのこと)。
家で待つ愛犬の大好物な焼き芋コーナーからホカホカの焼き芋をひとつ手に取って中に入ろうとした途端、

一瞬で内側の苦しみから解き放たれてすべてが至福の美しさに変わったのをはっきりと感じた。
一言でいうならば「すべてからの解放」。一つも苦しみのないクリアな感覚に驚いて、試しに仕事のことを
考えてみたが何一つ不満がないどころかすべての人に対しての愛しかなかった。「彼女」の存在すら忘れていた。

(なにこれ・・・すごく心地が良い)並べられた惣菜すら愛おしく思える。誰に対してもあふれ出る愛を放てる
ような、Aさんが言う「向かうところ敵なしの愛」に私は感動して、それが薄まった時、すぐ私の脳裏にAさんが現れた。
あ~、助けてくれたのかと思った。一瞬でも苦しみから解放してくれたのかと解釈した。

「すべてからの解放」は10秒くらいで、グラデーションのように徐々に元の自分に戻っているような感じだったが
その間もすれ違う全ての人の表情や心まで美しい人に思えて今振り返っても実際にそうだったと断言できる。

レジに着く頃、彼女が舵を握る船で目覚めて、やっぱり現実はこっちだったかと思った。
B(私の妻)に連絡してAさんの家に行き、その体験を話した。私に何かしてくれた? と訊いたら、瞑想していたから何もしていないと言われた。私は勝手に、やっぱり!と思った。Aさんの行いが同じ敷地内の私に伝わってきたんだと思った。

Aさんは私が数秒感じた愛ある解放の意識が本物だと言う。信じがたいが、あの美しい世界を体験したら
時々聞かされるAさんの話は本当かもしれないと思えた。しかもその何倍も美しいものだとAさんは言った。
私はどんな境地なんだろうとワクワクした。あの感覚がもし一日続いたらどれだけ楽になるだろう。
どれだけ人にやさしくできるだろう。どれだけ人を救えるだろう。

どんな悪も愛が一瞬で消してくれた。ホントに言葉通り 一瞬 ですべてが変わった。
また出会いたくても姿も形も時間もなく、どこで会えるかわからない。
「それ」はっきりと現れ、煙のように消えていった。だけどあの出会いが間違いなくあったことはこの体が全身で覚えている。

錯覚

仕事から帰宅途中、そして帰宅後、とにかく頭が痛かった。

強い圧力で頭全体を包み込まれているような感じで
何度か頭を振って振り払ってみたり、頭皮マッサージ
をするようにしてごまかしたりしてみたが、その痛みは
消えなかった。

あまりにも痛くてAさんに相談したら(Aさんはときどき治療してくれる)、
ソファに座ってと言って、首の後ろと胸の上あたりに手をかざして何か言った。

言われる通りに身をゆだねると「ス~」っと
痛みが消えたのに驚いた。

びっくりしてAさんを見上げた。
Aさんのゆっくりとした頷きから言わんとしたことを
察した気がした。

そのあと痛みは一瞬戻ってきたが
これを書いている今はもう痛みはない。

最近の体験から、普段感じている感覚が全て嘘で
本当はどんな苦しみもこの世に存在しないのかと
思ってしまう・・・

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